長谷川ニナ
【目次】
カバー画像:19世紀半ばのメキシコ市サント・ドミンゴ広場
1983年に、有名なメキシコの詩人オクタビオ・パスは、こんなことを言っている。
「メキシコ人は、自分の過去にとらわれているくせに、はっきりとした自分の過去に対する知識やイメージを持っていない。しかも、それだけでなく、どうやら自分を否定し、あるいは、自分を美化し、本当の自分を知ることを避けてきた。自分たちの国の歴史の中の、ある特定の部分を賛美し、逆に他の部分を無視する。メキシコの歴史は、黒インクで書かれた歴史と、透明なインクで書かれた歴史である。中でも、最も評価されなかった時代は、スペインの植民地時代だ。」(Paz, 1983, p.23)
これは、メキシコ人が、その300年間の植民地時代を、まるで存在しなかったかのように扱う傾向があるということを示唆している。